副業をしている人はどんな風に働いているのか。副業を通じてキャリアにどんな影響があったのか。サンカクを通じて実際に副業を始められた方にインタビューしました。
― 副業を始めるまでのご経歴を教えてください。
大学の工学研究科卒業後、新卒で大手消費財メーカーに入社。微生物に関する基礎研究に12年間携わり、博士号も取得しました。
その後、衛生用品の商品開発に携わっていました。
― どのようなきっかけ・理由で副業を始めたのですか?
基礎研究を経て商品開発部門に移ったのですが、昨今は社会の変化のスピードが速く、自身の専門領域の知識や経験だけでは足りないと感じていました。
これからの時代、もっと視野を広げ、経験に多様性を持たなければ人や社会の役に立てないんじゃないか、と。
「ビジネスの勉強がしたい」と思ってネットで調べたところ、社会人インターンシップ「サンカク」を知ったんです。本業とは異なる分野に触れてみたいと思い、教育会社や電子機器メーカーなどの案件などに参加しました。
「サンカク」のサイトをたまにチェックしていたら、「ふるさと副業」を発見。「株式会社未病マーカー研究所」の募集を見て、自分の専門知識が活かせそうだと思いました。
年齢を重ねるにつれて「社会貢献」への意識も強くなってきていたので、「予防医療」というテーマにも興味を持ちました。また、僕は関西出身なので、関西の企業の役に立ちたいと思い、応募しました。
― 副業先ではどのような役割、業務を担っているのでしょうか?
また、同社には研究者が2名いらっしゃるんですが、ときに研究者の意向と営業現場の意向がかみ合わないこともあります。私は双方の立場や気持ちが理解できるので、間に立って調整役を務めています。
― 副業ではどんなペースで、どんな働き方をしていますか?
社長と副業メンバー3人でのミーティングが月1~2回、計2時間程度。調査業務に週1時間程度。
あとはSlackでコミュニケーションをとる中で上がってきた課題に対し、必要に応じて対応しています。
― 副業をしてみての感想、手応えをお聞かせください。
非常に面白いです。ずっと大企業にいるので、スタートアップの動きを初めて経験したんですが、ビジネスの仕方がまったく異なるところが面白い。
本業の会社では、何か提案すると、稟議のためにかなり時間がかかることが多いのですが、副業先ではその日のうちに決まって動き出す。そのスピード感が新鮮です。
また、まったく専門性が異なる2人の副業メンバーとチームを組んでいるので、新たな知識を得たり、助け合えたりするところにも面白さを感じています。
社長は銀行を定年退職した後にスタートアップにチャレンジしている方なのですが、経験豊富なのに謙虚で、学習意欲が強い。人間的に魅力的なので一緒に仕事をしていて楽しいです。
僕たち3人が入った時点に比べ、いろいろな仕組みが整ってきて、ロードマップも描けてきました。土から芽が出てきているので、今後の成長が楽しみです。
― 「社会人インターンシップ」と「副業」の違いをどう感じていますか?
社会人インターシップでも、いろいろな気付きがあり、視野が広がりました。ただ本業に戻ると、実務に活かせない部分は徐々に忘れてしまうのかな、と。一方、副業は「継続」するし、「自分事としての意識」を持って取り組むし、「PDCAを回す」ので、学びがしっかり身に付く感覚があります。
それに、自分が動いたことによる変化や成果も見えるので、社長から「ありがとう」と言われるとうれしいですよね。役に立てている実感があります。
― 副業を経験したことで、ご自身に変化や成長はありましたか?
20年築いてきた「研究員」のポジションを捨てることには、怖さも感じました。でも、副業先の社長の姿を見ていて「こんなふうに頑張ればいいんだ」と思えたんです。
自身の中の変化といえば、もう一つ。「会社は一つじゃない」という意識に変わりました。長年同じ会社に勤務するうちに「失敗すると終わりだ」という概念にとらわれ、気を使って過ごしていました。
でも今は、「もし失敗しても別の選択肢がある」と思えるようになりましたね。副業を経験したことで「別の会社でもやれる」「一つの会社に縛られる必要はない」という感覚を持てたので。
― 新しい部門でのお仕事で、副業での経験は活かせそうですか?
「スピード感」「異分野の人たちとのコミュニケーションの取り方」などが活かせると考えています。分野が異なればロジックの立て方や物事の進め方、対人関係の作り方が異なることを学びました。
新規事業を生み出す仕事には、多様な部門、あるいは社外の人々との連携が必要です。その点で、副業を通じて異分野の方々と協働している経験が活かせると思います。
― 今後も副業を続けていこうと思いますか?
続けるつもりです。仕事は複数、同時で持っていたほうがいいと感じています。
例えば、夢が一つしかないと、その夢が叶わなかったときに落ち込みますよね。でももう一つ夢があればそちらを目指せばいい。
仕事を野球のバッターボックスに例えると、1打席しかなければ三振を恐れて思いきりバットを振れなかったりする。でも2打席あれば思い切ってフルスイングができる。副業があることで、本業で迷わずチャレンジができると思っています。
― これから副業を検討している皆さんにメッセージをお願いします。
後輩たちにも「副業やったほうがいいよ」と伝えることが多いです。確実に世界が広がりますから。
若い人であれば、副業を通じて自分に足りないものに気付き、それを勉強すればいい。ベテラン層の方々も、これまでの経験と培ったノウハウを異分野で活かして新しいものを生み出せれば、やりがいも感じられるし面白いと思います。