副業で報酬を得たら確定申告は必要?
勤め人の場合、本業の収入に関しては、会社が年末調整を行っているため、個人が確定申告など税金に関する手続きを行うケースはごく稀です。しかし、副業の場合は、そうとは限りません。「手渡しで副業の報酬を受け取ったため、給与明細がない」「副業の給与も、確定申告や年末調整が必要なのかどうか知りたい」など、副業での収入の扱いに悩んでいる人は、少なくないでしょう。しかし、手続きが不要であると勘違いし、確定申告や住民税の申告をしなかったばかりに後から住民税の是正を求められたというケースもあるのです。今回は、収入の種類といった基礎的な部分から、副業をしているビジネスパーソンの確定申告の方法まで、すぐに役立つ内容をご紹介していきます。
報酬とは、物やサービス提供の対価として渡されるものを意味します。金銭に限らず、物品も含まれます。報酬に関しては、その内容によって源泉徴収されるケースとされないケースがあります。源泉徴収される場合には、支払調書が発行されることとなります。副業で得た報酬は、事業所得になるのか雑所得になるのかにより、確定申告書の書き方や納税額の計算などが違ってきます。事業所得の方が計算上有利となる場合が多いですが、副業の状況や収入規模によって判断されますので注意が必要です。
給与・給料とは、勤務先から支給される「労働に対する対価」のことです。「給料」とは、労働に対する報酬のことで、ビジネスパーソンであれば基本給を指します。「給与」とは、勤務先より支給される全てで、給料に各種手当や賞与などを含めたものになります。
所得とは、「収入金額」から「収入を得るために要した必要経費」や税務上の特別な「控除額」を差し引いたものになります。例えば、副業として商品を仕入れて販売している場合は、商品の販売収入から仕入れ価格やその販売にかかった経費を差し引いたものを所得と呼びます。給与所得の計算では、「給与収入」から所定の「給与所得控除額」を差し引いたものが所得となります。さらに課税所得の計算においては、所得の合計額から下記の所得控除を差し引くことができます。所得控除は15種類ほどあり、要件を満たすと控除を受けられます。
副業を行っておらず、本業の会社からのみ給料を受け取っている状態であれば、年末調整が行われているはずです。年末調整とは、あなたの代わりに会社が仮の形で確定申告を行ってくれるものです。会社があなたに支払った給与を基に、あなたから提出された年末調整資料を使って所得税の計算を行います。この金額と、給与を支払うごとに天引きしてきた源泉所得税額とを照らした上で、所得税を還付または徴収するための制度です。このときに会社から、生命保険料や地震保険料控除の用紙の提出を求められるのは、所得控除額や税額控除を考慮した上で、再度計算が必要となるためです。
しかし、年末調整ができるのは、本業の主たる給与を受け取っている1カ所のみです。従たる給与の副業に関しては、年末調整はできないため、確定申告が必要となってきます。
とはいえ、副業をしている全ての人が確定申告の対象となるわけではありません。働き方と収入により、必要かどうかは変わります。下記の収入額に達すると確定申告が必要になります。
働き方【所得の種類】 | 収入額 | |
1 | 【給与所得】 例:雇用契約を締結 (パート・アルバイトなど) | 副業による給与収入が20万円超 |
2 | 【雑所得】 例:ちょっとした業務委託 (イラスト・ライティング・文字起こし・ネットオークション、フリマ、クラウドソーシングなど) | 収入-必要経費=20万円超 |
3 | 【事業所得】 例:個人事業での売り上げ (ネットショップなど) ※継続、安定的な売り上げがないと事業とは認められません | 収入-必要経費=所得が20万超 ※青色申告が認められると必要経費の他に10万円(または65万円)控除できますが、副業を事業所得とする場合には金額に関係なく確定申告は必要です。 |
4 | 【不動産所得】 不動産収入 (家賃収入、土地レンタルなど) | 不動産収入-必要経費(修繕費用や不動産業者への手数料)=不動産所得 ※青色申告する場合には金額に関係なく確定申告は必要です。 |
必要経費として認められるためには、請求書や領収書などの保存が必要なので注意しましょう。また、医療費控除やふるさと納税、初年度の住宅ローン控除などの適用を受けるために確定申告する場合には、副業が上記の収入額に達していなくても確定申告する必要があるため、ご注意ください。
副業を行い、収入を得る際にもうひとつ注意しておきたいのが、個人住民税(住民税)です。所得税の場合、年末調整や確定申告で、会社や納税者自身が計算、申告をしています。しかし、住民税に関しては、市区町村が給与支払者から提出される「給与支払報告書」や納税者から提出された確定申告書などの課税資料を元に、納税者に通知・課税する仕組みになっています。
メインの給与収入があっても、給与所得や退職所得以外の所得の合計額が20万円以下の場合、確定申告は必要ありませんが、住民税の申告は必要な場合が稀にあります。その場合の申告方法は、住民税申告書をお住いの市区町村へ提出することになります。迷った場合は、在住自治体の課税課にご確認ください。確定申告が不要だと勘違いしてそのまま放置してしまうと、時には副業分の住民税が上乗せされて会社に通知され、本業の会社の給与天引きをやり直しさせられる場合もあります。また、副業の所得に課せられた住民税の給与天引きを避けるためには、確定申告する際、確定申告書「第二表」の「給与所得以外の住民税の徴収方法の選択」という欄を確認しましょう。「自分で納付(普通徴収)」欄にチェックを入れておけば、会社の給与からの天引きとは別に副業分については納付書が自宅に送られてくることになります。また、市区町村へ住民税を申告するときは、「給与・公的年金等に係る所得以外の住民税の納付方法」の欄を確認します。「特別徴収(給与からの天引き)」ではなく「普通徴収(個人での納付)」を選択しておきましょう。
【監修】
八重洲税理士法人
税理士 曽宮 崇広