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2023年4月18日

副業をしている人はどんな風に働いているのか。副業を通じてキャリアにどんな影響があったのか。サンカクを通じて実際に副業を始められた方にインタビューしました。

副業実践者紹介

お話しを伺った方

Bさん(30代/男性)

本業

大手メーカーの東京本社にて新規事業企画を担当

副業先

株式会社マルサ

<企業概要>創業70周年の金属加工メーカー。建設時に使用する建設仮設と呼ばれる金属の足場に関わる製品を主力とするほか、農業、物流業界にも販売
本社所在地:新潟県三条市 設立:1968年(創業1951年)従業員数47名


副業先での役割・業務

新商品の開発

「素振り」ばかりでなく、バッターボックスで球を打ちたい

― どのような経緯・目的で副業を始めたのですか?

以前から社会人インターンシップの「サンカク」で、さまざまな業種の企業のワークショップに参加していました。
異業界・他社の人たちとのディスカッションを通じ、自社内の常識と世間一般の常識がかけ離れていることもあると認識できましたし、新しい視点が得られました。

単発のワークショップに参加するだけでなく、「副業」をしようと考えたのは、「バッターボックスに立って球を打ちたかった」からです。
学生時代は情報工学を専攻し、ロボットを動かすようなこともしていたので、自分で手を動かしてモノ作りをしたいという思いがありました。

しかし、本業では「戦略」の検討が中心で、頭でっかちになりがちです。
大手企業が世界を変えるようなイノベーションに取り組むとなると、形になるまでに時間がかかる。明確な成功体験を得られるのは会社人生で1回か2回くらいしかないかもしれない。すると「やっている感」を持てなくなることがあるんです。
感覚としては、一流の野球チームに所属しているけれど、バットでひたすら素振りをしているような……。

実際に打席に立って球を打ちたい。その経験をするために「副業」という手段は有効かもしれないと考えました。そこで出会ったのが、サンカクの「ふるさと副業」で「新商品開発」の副業人材を募集していた株式会社マルサです。
ニッチトップの商品や取り組みが複数あるし、新商品開発責任者の専務は面白い方だし、新しいことを取り入れようとする積極的な社風がある。
この会社でなら、「バットを振って球を打つ」ことができるかもしれない――つまり自分のアイデアを形にして世に出す経験ができるかもしれないと考えて応募し、採用されました。

― 副業では新商品のアイデア出しをされているとのことです。どのように時間を使っていますか?

普通に生活する中で、思いついたことがあればスマホにメモしておきます。それを資料にまとめるのは土曜。
サンカクでは他にも複数社で副業をしているので、すべてまとめて土曜日の1~3時間程度で一気に資料作成しています。

未経験の業界でも、ビジネスの基礎力は活かせる

― 本業の業種とはまったく異なり、株式会社マルサの主力商材である金属加工品・建築資材の経験はないそうですが、それでもアイデアを生み出せるものなのでしょうか。

結構できています。本業でやっている「他社との共創」においても、相手は異業種なので知らないことも多い。それでも、大まかな方針を聞き、さまざまなキーワードを出してみて、その反応を結合し、潜在課題をつかむ活動をしてきたので、その経験が活かせました。

あと、日頃心がけているのは、改装工事中のビルを見つけたら観察してみるとか、ホームセンターに行ったついでに建築資材売り場を見てみる、など。
私の会社にはもともと「オフィスにいないで街に出よう」「新しいお店ができたら足を運んでサービスに触れよう」といった行動を推奨する風土があります。日頃から興味関心を持ってアンテナを張る習慣が身に付いているので、アイデア出しのための情報収集も自然にできるんです。

― 本業での経験をフルに活かしているとお見受けしますが、副業で「新たに得られたもの」は何ですか?

株式会社マルサで副業を始めて1年と少し経ちますが、専務ともう1人の副業メンバーとの3人で、これまでに150ほどのアイデアを出しました。そこから10くらいに絞り込み、2~3が試作段階へ進んでいます。
先ほど、副業を始めた理由を「素振りだけでなく、打席に立ちたいから」と言いましたが、まさに球を打っている実感があって楽しいですね。
本業でもどかしさを感じている部分を副業でカバーできているので、精神衛生面でも良かったと思います。

また、副業を通じて「トライ・アンド・エラーを繰り返しながら形にしていく」プロセスを体験できていることにも価値を感じています。
大手企業内では「失敗しないために、チャレンジもしない」という傾向も見られます。けれど、失敗して、失敗の原因を分析して、ナレッジとして蓄えていくことも重要。その点、フットワークが軽い小規模企業では、チャレンジして失敗することもしやすい。それを実践できたのはいい経験になったと思うし、今後本業にも活かしていきたいと考えています。

なお、株式会社マルサ以外にも、四国の梱包材メーカーの新商品開発や関西のレジャー企業の施策のプロモーションなど、複数の副業をしています。
異なる業種での取り組みを併行することで、「この観点はこちらにも適用できるな」「この分野とこの分野の課題は本質的に共通しているな」といった気付きが得られ、相乗効果を生んでいると思います。

副業を通じて「知っていること」「語れること」を増やしていきたい

― 副業の経験を活かし、今後どんなキャリア展開をイメージされていますか

現時点では明確なキャリアプランは描いていません。ただ、当面は一つのことを深く極めていくより、幅を広げていきたいです。
「この業界を知っている」「このテーマについて語れる」というものを、どんどん増やしていくことに面白みを感じています。
興味を持ったらとりあえず触ってみたい、考えてみたい、経験してみたい。「つまらない」と思ったら、「なぜつまらないと感じるんだろう」と、その理由を知りたいと思います。
自分の興味の方向性や感情を知ることも含め、実験・観察をしているような感覚ですね。だから今は、キャパオーバーになるまで活動範囲を広げていくつもりです。

― 副業で手応えを得た先に、今の会社を辞めて転職するという選択肢も考えていますか?

実は今の会社に新卒入社した当初、「この会社に10年いるつもりはない」「3~4年ほど経験を積んだらITベンチャーに転職するか独立起業したい」と考えていました。
しかし今は、この会社に居続けるメリットもあると捉えています。「社会を変える」「国を変える」くらいのことをやろうとするなら、やはり今くらいの規模の大手企業にいたほうが実現しやすい。そのチャンスを得られる環境に身を置いておきたいと思います。
大手企業内で不満を感じているポイントについては副業で解消できる。だから今はとても心地がいい状態です。

― これから副業を検討している皆さんにメッセージをお願いします。

一つのことだけに集中したい志向の人、本業とのバランスをうまく保てない人は別として、マルチタスクができる人であれば全員副業をしたほうがいい、と私は思います。企業から義務付けてもいいくらい、副業には良い効果がたくさんあると感じています。

また、「ITスキルを磨いてキャリアアップにつなげたい」と考えている人にとっても、副業は有効な手段だと思います。
ITは、一昔前は情報工学系の大学や専門学校で学んだ人、プログラマ・SEとして経験を積んだ人でなければ扱えないものでしたが、ツールが整備された昨今は活用ハードルが低くなっています。
例えば、個人がAWS(Amazon Web Services)などでサーバを組み、Webサイトやアプリを制作することも簡単にできる時代です。
地方企業には、ECサイトを作りたい・活用度を高めたいといったニーズがあるものの、地元には人材がいなくて困っているケースがたくさんあると思います。
そうした企業を「副業」という形でお手伝いすることで、独自で学んで身に付けたIT知識を「実務経験」に発展させられるのではないでしょうか。

実際の企業担当者の声

企業担当者様の声

Bさんは、ご本人が副業でやろうとしていることと当社に足りていないものがうまくマッチしていたことが決め手となりました。
足りないと感じていたのものとは、「事業分析力」です。私も事業分析はできますが、自社の経緯を知っている分、主観的になり、バイアスもかかってしまいます。その点で、他のメーカーの視点で事業の構造を分析してもらえることに価値を感じました。

私・Aさん(他の副業者)・Bさんで明確な役割分担をしているわけではなく、全員がアイデア出しとその検証を行っています。
事業開発の経験が豊富なBさんには、企画のフレームワークを提供いただいています。
例えば、アイデアを検討する際、優先順位を決めるためにさまざまな観点の項目に点数を付けて比較するワークシートなど。
アイデア出しのワークショップで一般的に使われる手法だそうですが、これまで自社で使ったことがなかったので、体系的なノウハウを取り入れられたことは大きな副産物だと感じています。

副業者を迎えて1年強が立ち、開発のスピードは明らかに上がりました。
新商品のアイデアが150ほど出て、そこから10ほどに絞り込み、試作である程度の形になっているものが2~3あります。
いずれは他の社員にも参加してもらい、新たな刺激や学びを得られるといいと思います。

お話しを伺った方

株式会社マルサ
専務取締役 齋藤 大さん

企業HP:https://www.malsa.co.jp/html/


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