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【後編】優秀な人に多く会うことで、自分のタグ(強み)を見つける──山口義宏さんが語った「一歩踏み出す挑戦」

「自分のスキルは社外でも通用するのだろうか」──今後のキャリアに不安を感じ、社外での自分の可能性を知りたいと考えるビジネスパーソンは少なくありません。最新ビジネストレンドを掴み、本業以外でもスキルアップを目指したい人もいるでしょう。
前編に続き、後編ではブランドコンサルティングの第一線で活躍するインサイトフォース代表取締役 山口義宏さんに社外コミュニティや新規ビジネスに関わることが自身のキャリアにどんな変化をもたらしたのかを語っていただきました。

自分や会社を相対比較できるようになる

──山口さんは若い頃から、社外コミュニティや他社プロジェクトに参加されていたのですか。
山口:私はコンサルティングという仕事柄、常に社外のプロジェクトに携われる業種だったので、実務がそのままクライアントの事業と組織に触れる経験となるため、クライアントの方々との経験から学べたことが大きかったですね。

だから、あまり業界交流イベントには行っていませんでした。コンサルタントは違う会社と常に関わり続けていられますから、相対化で理解を深めやすい環境ではあります。どの企業もそれぞれに個性的で、強みと弱みは表裏一体です。外からの見え方の良し悪しはレベル差ありますが、すべてが整った会社なんてありません。

ただ私のような業種でなくとも、他社の状況を知るチャンスはいくらでもあります。その有効な手段のひとつは就職活動や転職活動です。情報収集はもちろん、面接である程度まで進めば対面の面談で経営層と話す機会も得られます。対面の面接は、外から会社案内やホームページで知るのとはレベルの違う情報や印象が得られ、自分とのマッチングの理解も深まるはずです。

転職活動や、実際に転職してから改めて、前の会社の良し悪しに気づくこともありますしね。実際、私も独立する前に何度か転職をしていますが、外に出てから前職の良い点に気づいたことも往々にしてありました。

個人的には、二十代の半ばで、ソニーグループのコンサルティング会社で働いていたときに、ソニーグループというグローバルな巨大企業がどのような仕組みや組織文化によって経営ガバナンスが成り立っているかを体感して学べたたことは大きな財産となりました。
同様に、二十代後半では、リクルート出身の方々が経営層に多いリンクアンドモチベーションで働いた経験は、営業ドリブンな会社の勢いや、それを支える組織文化の保ち方など、大きな学びがありました。
業種や会社や事業ステージが変われば、求められる能力も気質も変わります。優秀な人材と言葉は安易に使われがちですが、その優秀と評される物差しは、業界や企業によって驚くほど違う。基本的には、自分の強みが評価される環境を得ることが、良いキャリアを築く基本条件となるため、多様な会社の強みや価値観を知ることを通じて、自分の強みが活きて、モチベーションが維持しやすい環境条件を理解することは非常に大切です。

ただ私は全員一律に転職を勧めているわけではありませんし、転職をしなくとも、外の事業に触れる機会が今では整っています。サンカクのようなプラットフォームを利用する選択肢もありますし、知り合いを通して他社や他人と意見交換を行うことも可能だからです。

優秀な人に多く会うことで、自分のタグ(強み)を見つける

山口:自分なりのタグ・強みを見つける機会も、コミュニティで得られるメリットのひとつです。そのタグを見つけるには、自分より圧倒的に優秀な人に会うことがポイントです。

実際、マーケリアルサロンでもそのような、何かに秀でた方が多くいますし、ゲストも当然尖った強みをお持ちです。私を含め、そのような人と対峙していると、自分がうぬぼれていた過信要素も気付かされますし、逆に自分の強みや尖った部分が結果的に鮮明になったりします。

この尖った部分、つまり何かの専門性というタグを持ち、それを労働市場で主張して知られていくことは、個人のキャリアとして、とても重要です。

──具体的に山口さんのタグは、どういったものになるのでしょう。
山口:マーケティング業界において、優れた企画やアイデアを生み出す発想力豊かな人は大勢います。実際、私はその分野のトップクラスのクリエイターの方々と何度か仕事でご一緒しましたが、いわゆる右脳的なアイデア出しでは、到底勝てないことを痛感しました。

一方、私はブランドや生活者が持つ定性的な価値観を類型化し、整理するインサイトのセンスや、数字やファイナンスからストラテジーを考える。いわゆる左脳的な切り口でマーケティング戦略を整理し、大手企業のなかで意思決定に落とし込むロジックをつくる領域であれば、かなり得意です。業界内でもそれなりのポジションを得られるのではないかと気づきました。

マーケティングの世界では、同分野で存在感を発揮している人が少ない、つまり競合が極めて少ないのもプラス要素でした。マーケティングというのは、消費者の下世話さも含めた非合理な生々しい欲望の理解や言語化といったインサイトが大切です。その心のマトを外したら、どれだけマーケティング施策に投資しても成果は出ません。

一方で、大企業では経営の意思決定として合理的だと組織が合意形成できるロジックとプロセスが大切です。このふたつの両方に強い人は少ない。そこを橋渡しして、つなぐことは私個人のキャリアや、弊社の会社としても大きな機会となっています。

──そうしてそこから現在に至るまでのキャリアを構築されてきたと。ただ自分で自分のタグって、なかなか見つからないものですよね。
山口:実は私がこのタグの存在やニーズを見つけたのは、二十代半ばに、クライアントの経営者とのやりとりで気づいたものでした。その方は、もともとファイナンスが専門性の方ですが、マーケティング戦略を構築するセンスも素晴らしい。左脳的に鮮やかに整理される現場を目の当たりにし、マーケティングには企画のクリエイティビティだけがすべてではないと実感させられました。

クリエイティビティもリソースの手当も組織の実行も、どれも大事で、それを突き詰めるとマーケティングは経営そのものと感じます。正確に言えば、経営リソースである人・モノ・金を有機的に連携して成果を出すために束ねるものがマーケティングなのだと思います。人・モノ・金のリソースがバラバラに動くと、リソース投下量が多くても成果は出ません。

その方にこのことを教わったのは20代前半で、今でもお付き合いがありますから、かれこれ20年以上の関係になります。私にとってメンターのような存在で、時あるごとに学びや、刺激をもらっています。

──逆に、自分の尖った部分が他人と比べて優れていたことが社外コミュニティで分かり、自信につながった。そのような声も、サンカクの利用者からは届きます。

山口:メンターもそうですが、単に人脈が広がるというのも社外コミュニティの利点です。そしてそのネットワークが、結果として実務に活きることも多い。例えば、ある領域が得意な企業を探していて、マーケリアルサロンのメンバーに相談を投げたのです。

するとメンバーから的確で価値ある情報が、5~6件返ってきました。私も「CI領域で良いデザイナーいたら教えてください」と投稿したら、たくさん教えてもらいました。実務で助かっています。

このような人脈の価値を感じているのは私だけではありません。実際メンバーから「利害関係のないメンバーと交流できることが一番のメリットです」といった声が届いています。

会社員にとって最高の贅沢である新規事業は絶対にやるべき

──新規事業やサービスにチャレンジするメリットについても聞かせてください。
山口:絶対にやるべきです。特に、会社勤めのビジネスパーソンにとって、新規事業はまさにチャレンジですよね。当然、失敗することもあります。ただ失敗したからといって、自分個人の貯金や金融資産が減ることはほぼありません(笑)。まぁ、失敗の仕方によっては、せいぜい評価が下がってちょっと出世が滞るかも?程度の話で、事業のファイナンス面でリスクを負うのは、会社です。

逆にうまくいったら、飛躍的な出世が期待できますし、給与も当然上がるでしょう。つまり会社人にとって新規事業に携われることは、最高の贅沢だと私は考えています。失敗しても、そこで得られる経験の資産は貴重です。つまり雇われたビジネスパーソンが新規事業に挑戦するのは得しかありません。リスクとリターンの関係にこれだけ歪みのある有利な機会はそうそうありません(笑)

さらに、新規事業に携わっていると、ビジネスにおける己の戦闘力を知ることができます。通常業務の多くは、先人たちが築き上げた商品・サービスや業務インフラの上で成果を出していきますが、新規事業はまったく別の能力。ゼロイチが求められるからです。

このゼロイチの能力を自分が持っていれば、どこにいっても重宝されます。ましてや新規事業を立ち上げ成功させたとの実績があれば、それこそ転職先に困ることはありません。

そういった市場における自分の価値、戦闘能力を測る上でも、特に若い人は絶対に経験しておくべきだと思います。仮に新規事業に関わってみて、絶対に向いていないと思い知ったら、その後のキャリアは寄らば大樹の陰に徹するという強い指針につながり、それはそれで自分の特性を知った幸せな選択ができるようになります(笑)。

まあ半分冗談ですが、新規事業は辛くてタフな分、自分と周囲の人間の本性が見えて、人の持つ無限の可能性と同時に醜悪さにふれる機会も多く、人生の学びの究極の場だと思います。

──最後にメッセージをいただけますか。
山口:仕事のキャリアは多様なものですが、何か大きなことを成し遂げようと目指すなら、基本的に自分の強みを活かし、伸ばして戦うしかありません。そのためには自分の強み~弱みを嫌でも思い知るような優れた人と触れる環境に身を置くことが大切です。

若いうちは、そのような場で得た知識やノウハウを手っ取り早く武器にするのも良いでしょう。しかし、一定以上の年齢や立場になれば、ビジネスの大きな絵を描き、周囲を巻き込んで推進することが求められます。そこに向けた道のりを組み立てることができる視点の高さを持つ同時に、それを一緒に実行するための仲間が必要になるのです。

ビジネス視点での良いコミュニティや社外交流とは、視点の高さとなれ合いではない成長刺激をもたらしてくれるものです。そのような場で自分を研鑽し、次第に周囲から認められていく。そのことで、さらなる上のステージの人と出会うことで新たなキャリアと活躍の場を手に入れることができる。私はそのように考えています。

私個人にとっても、そして参加メンバーにとっても、そのような場になれば良いと思い、マーケティングのサロンでファシリテーターを担っていますので、ご関心ある方は以下のリンク先をチェックしてみてください。

マーケティング思考を一流ゲストに学ぶ 「マーケリアルサロン」

■編集部より

前編では『自分が属する業界や会社とは違う視点や常識に触れること』の重要性を語ってくださった山口さん。
今回の記事を読んで一歩踏み出して行動したいと思われた方も多いのではないでしょうか?
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