【イベントレポート】人材調達の新手法!?副業マッチングイベントの最前線
8月24日開催 【イベントレポート】人材調達の新手法!?副業マッチングイベントの最前線"
中小企業における人手不足が深刻なっている昨今、新たな人事調達の手段として“副業ワーカーの受け入れ”に注目が集まっています。
働き方改革によって副業に興味を持つ働き手が増えている中、新たな働き方を受け入れ、優秀な人材の獲得を目指す企業を応援する「はじめての副業セミナー」を、2019年8月24日(土)にリクルートキャリア本社で開催しました。
副業者の募集をしている4社と副業ビギナーが一堂に会し、ワークショップを挟みながら、お互いに副業のイメージを深めていくリアルイベントの様子をレポートします。
●副業への関わり方は色んな形がある。まず始めてみることが重要
まず第1部では案件紹介の前に、“副業のプロ”から副業のノウハウに関する講演が行われました。
登壇したのは、「働き方をリデザインする」をテーマにさまざまなプロジェクトを推進している社団法人Work Design Lab代表理事の石川貴志氏。自身が会社員をしながら、地方の自治体や企業のプロジェクトをサポートしている副業ワーカーであり、2017年には経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出事例集」に選出されています。
石川氏によれば、これから企業には産業構造の変化によって、社内の人材だけで対応できないような課題がますます増えてくるとのこと。そのためビジネスの形は、企業や業種の垣根を超えて外から人材を連れてくるプロジェクト型に変わっていくとし、ここに副業ワーカーを起用する場があることを示唆します。
石川氏が携わっているプロジェクトでも社外活動に興味のあるビジネスパーソンが集まり、「専門商社のWebマーケティングを支援する」「医療事業を手掛ける企業の財務戦略にアドバイスする」などさまざまなプロジェクトを立ち上げ、その企業だけでは果たせない機能をサポートしてきました。
副業をしたことがない人は、まずは『学習者』という形でボランタリーに社外プロジェクトに参加してみる手段もあると語る石川氏。
自分の専門外の分野で学びを機会を得ながら、ゆくゆくは副業者として成果にコミットしていく始め方もあるとのこと。「はじめから金銭的報酬をもらるのではなく、まずは社外活動に参加してみることが重要」と語られていました。
●営業企画からメンター案件まで。バラエティに富むビジネス系職種の副業
第2部では、参加企業4社が会社説明や副業募集案件について説明を行い、参加者からの質問に答えていくプログラムが行われました。
《株式会社エージェント》
社会の「困った!」を解決するキャリアプロダクション。自社の人財力を強みに、企業のセールス、マーケティング、テクノロジー、キャリア領域の課題に共に取り組み、解決へと導く。
https://agent-network.com/
《シタテル株式会社》
2014年に衣服生産プラットフォーム「sitateru(シタテル)」を設立。アパレル企業やブランドなど「衣服を作りたい」側の提案に対し、専門知識を持つコンシェルジュがロット数などを考慮して縫製工場とマッチングし、生産面をワンストップでサポートしている。
https://sitateru.com/
《株式会社ジー・ブーン》
自分の夢をビジネスで叶える「ドリーム企業」という新経営モデルを旗印に2006年起業。ITアウトソーシング事業を中核に、世界初となるアイデア出しに特化したレンタル会議室「アイデア会議室」や、和文化ファッションをリメークしたフォトスタジオ「姫と侍」を展開している。
https://www.zeeboon.jp/
《株式会社fruor》
子育て中の人を対象としたキャリア支援及び採用支援企業として2019年1月設立。仕事と家庭の両立をカウンセリングから仕事探しまで一貫してサポートする「meetcareer」を運営し、週3、4日から働ける、やりがいある業務委託の案件を紹介している。
https://www.meetcareer.net/
参加企業の一社である株式会社fruorは、自分に合った働き方を見つけるためのキャリア支援サービス「meetcareer(ミートキャリア)」を3カ月ほど前に運営開始したばかり。
今回は副業として、利用企業をさらに増やしていくために営業戦略の企画~実行と、これからどう事業を展開していくべきかを共に描く事業戦略立案について、副業者の募集をしています。
代表の喜多村若菜氏はサービス立ち上げの経緯について生き生きと説明します。
「大学の後輩に、卒業してすぐ子どもが生まれて就職できなくなり悩んでいた子がいたので、当時私が勤めていた会社からリモートワークをお願いしたことがありました。今は別の企業で正社員として働いているのですが、キャリアアップを図りたくてもそういう風に子育てや地方在住など、さまざまな制約から週5フルタイムで働けない人はたくさんいると思います。そうした方々を支援し、ライフステージに合った働き方を選択できるようなサービスを作ろうと起業しました」
実体験に基づいたサービスへの思い入れに、参加者たちもうなずきながら熱心に耳を傾けます。
質疑応答では、「営業活動は具体的にはどんなことをやるのでしょうか?」「独身男性でも問題はないでしょうか?」など質問が積極的に飛び交いました。
ほかの企業でも「自社運営メディアの記事ライティング」や「リーダークラスの社員に仕事をアドバイスするビジネスメンター」、「マーケティング戦略を描くためのマーケットリサーチ」など、実にさまざまな職種の副業案件が示されました。
医療機関でコンサルティング業務を行っている36歳女性は、「普段は人事労務管理に携わっているのでそれを活かせる副業はないか気になっていましたが、メンターの募集まであるなんて」と驚いていました。
通信機器会社で営業を担当する32歳男性も、「普段営業で執筆や企画立案が多いので、副業としてWebライティングをやっていくことも可能だなと思いました」と、副業に対する視野が広がったようでした。
●企業は副業ワーカーのどこに注目したか 副業のプチ体験ワークショップ
第3部では、4社が用意したワークショップのいずれかに参加し、副業のイメージをより具体的につかんでもらいます。
衣服生産プラットフォーム「sitateru」を運営するシタテル株式会社は、企業向けのユニフォームのカスタムオーダーサービスを立ち上げたばかり。ワークショップでは参加者15人が3つの班に分かれ、その新規サービスが世間に広めるためのマーケティング戦略を自由に考えました。
「あのラーメンチェーンの制服っておしゃれで雑誌で特集されていましたよ」
「ホテル向けに、その地域の素材を制服に使う“地産地消”なオーダープランとかはどうでしょう?」
各班では企業にユニフォーム制作へ興味を持ってもらうためのアイデアを出し合います。普段は異なる仕事をしている者同士。自分の会社や業務からでは思いつかないような斜め上の発想が飛び出すたび、盛り上がりが生まれていました。
40分のディスカッションを終えた後は、シタテル執行役員・セールス&マーケティング担当者の鍛冶村忠さんに向け、各班が戦略を発表していきます。
最後の講評でシタテル株式会社の鍛冶村忠氏は、「副業とは、社内で生み出されるプロダクトやサービスを社外からサポートいただくものです。お仕事をお願いする方には、会社の事業や理念を短時間でキャッチしたり、社内に向けて論理的に企画を提案できたりと、理解力やコミュニケーション力を持っていることが重要だと考えています」と、副業者を受け入れる企業の観点を語られていました。
3時間に及んだセミナーのあとは懇親会が行われ、参加者も企業担当者もお酒を飲み交わしながら、副業事情について話に花を咲かせました。
全体を通してイベントで好評だったのは、企業との距離の近さです。
「一方的に話されるのではなく、質問もその場で受け付けてくれる双方向性がよかった」「文章だけのネットと違って、企業の雰囲気をしっかりつかむことができた」など、生の声を聞けたことに多くの参加者が満足していました。
企業側からも、「副業ワーカーとの接点はなかなか無いのでありがたかった」「直接対面で話すと相手の雰囲気がわかるので、お願いする立場としてもやりやすい」といった声が。
fruorの喜多村氏は、「うちのように新規事業を立ち上げたばかりの企業は視野が狭くなってしまいがちですが、ワークショップでいろんな業界の方から専門的な意見をもらえたのは非常によかったです」と、振り返っていました。
また今回のイベントには、副業を解禁・推奨しているサイボウズ株式会社、ソフトバンク株式会社、新生銀行グループの3社が後援についており、参加者に各社員の姿も見られました。
ある後援企業の社員は「もともと副業をやりたいと思っていたところ、社内メールで今回のイベント案内が回って来たので、一歩踏み出すいいきっかけになりました」と笑顔。副業への背中を押す絶好の機会となったようです。