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<経済産業省×サンカク特別企画>大学発ベンチャーの今と成長課題とは?最新技術でイノベーションをリードする注目ベンチャー3社にサンカク!

会社の枠を越えて、社外の企業で挑戦・貢献する機会を提供しているサンカク。今回は「大学発ベンチャーの今と成長課題」を特集するとともに、注目の大学ベンチャー3社に「サンカク」できる機会を提供する。

目次
  • 1. 経済産業省から見た大学発ベンチャーの現状、期待や課題 ・・・読む
  • 2. 株式会社データグリッド:創造型AIを実現するGANの技術でAIアプリケーションを開発 ・・・読む
  • 3. 株式会社チトセロボティクス:ロボット運動制御アルゴリズム「ALGoZa」で、労働力不足の解決を目指す ・・・読む
  • 4. 株式会社Kompath:医療現場に心地よさを届けるためユーザー目線を大切にした機器を大学や医師と共同開発 ・・・読む

経済産業省からみた大学発ベンチャーの現状、期待や課題

大学の研究成果を軸に事業を行っている大学発ベンチャーは、現在では国内に2000社超となり、日本経済の中で存在感を増しつつある。経済産業省では、大学発ベンチャー創造を成長戦略の一つと位置づけ、「大学発ベンチャー1000社計画」を打ち出した2001年以降、さまざまな支援活動を行っている。まずは大学発ベンチャーの現状、期待や課題について、経済産業省産業技術環境局の大学連携推進室で大学発ベンチャーの支援に取り組む稲畑航平氏と沖村和真氏にお聞きした。

経済産業省で大学発ベンチャーの支援に取り組む稲畑航平氏(右)、沖村和真氏

大学発ベンチャーが日本経済の中でイノベーターとして台頭中

大学発ベンチャーを取り巻く状況について、稲畑氏は次のように総括する。「2017年度の調査では、国内の大学発ベンチャーは2093社と、過去最高に達しています。また大学発ベンチャーで行われている研究開発は、バイオからITまで分野は多様ですが、いずれも大学の基礎研究から生まれた革新的な内容です。こうした大学発ベンチャーによって、これまでの常識では考えられなかった、世界を変えるようなイノベーションが起こりつつあります。企業価値または時価総額が10億ドル以上となる未上場のベンチャー企業は、その珍しさから“ユニコーン”と呼ばれます。2018年度に経済産業省が行った調査によると、日本で上場した大学発ベンチャーのうち、5社がこの“ユニコーン”並みの時価総額を有していることがわかりました。

これらを含め、上場した大学発ベンチャーの時価総額の合計は2兆円を超えます。日本の中小企業全体の中で、大学発ベンチャーの数が1パーセントに満たないことを考えれば、この数値は驚くべきことといえるでしょう。つまり大学発ベンチャーは、今の日本経済にイノベーションというかたちで大きいインパクトを与える存在になりつつあるのです」

ビジネス経験をもつ人材の不足が企業成長のネックに

しかし、国内の大学発ベンチャーのうち、上場を果たした企業は57社と決して多くはない。多くの大学発ベンチャーを訪問し、日夜現場での議論を繰り返している沖村氏は、大学発ベンチャーが抱える課題について「企業活動に必要な人材が圧倒的に不足していることが、成長のボトルネックになっている」と話す。「まずは経営人材です。大学発ベンチャーは、大学の研究成果が事業の軸となることが多いため、大学の教員や学生が中心となって設立する事例が目立ちます。しかし彼らはビジネスの専門家ではなく、投資家や顧客のニーズを汲んで経営判断を行うことに必ずしも長けていないため、ある時点になると行き詰まるケースがみられます」

さらに法務や財務、人事、営業などに従事する専門人材の不足も深刻な課題だという。
「スタートアップでは、このような職種を少人数のメンバーで兼務することが多いものの、パフォーマンスが担保できません。さらに企業規模が拡大するにつれて、当然ながら兼務では回らなくなり、スペシャリストの存在が不可欠となります。しかし、今の日本でこのような専門性をもつ人材の多くは大手企業に勤務しており、現状では大学発ベンチャーとの接点がないケースがほとんどです」 
だからこそ大学発ベンチャーは、さらなる企業成長を遂げるために、ビジネス経験に優れた外部人材の協力を切実に求めている。

大学発ベンチャーが起こすイノベーションの一翼を担う人材が求められている

一方、働き手の視点から見ると、既存の企業にはない魅力が大学発ベンチャーにはあると稲畑氏は指摘する。「特に大手企業では、例えば専門人材が活躍するにしても、すでに完成された枠組みの中で力を発揮することが求められます。一方、大学発ベンチャーをはじめとするベンチャーでは、ゼロから枠組みをつくっていくスキルが必要です。さらに、大学の基礎研究の成果を譲り受けて起業しているケースが多いため、革新的な研究成果をもって社会を変える可能性を秘めているのは大学発ベンチャーならではの魅力といえます。ワーカーの個性にもよりますが、大学発ベンチャーでは自分自身がイノベーションの一翼を担っていける面白さがあるのではないでしょうか。最先端の研究活動を活かした事業を展開する大学発ベンチャーと、企業で多様な経験を積んできたビジネスパーソンとの出会いから、市場を揺るがす『破壊的なイノベーション』が実現することを期待しています」

それではこれより、注目の大学発ベンチャー3社にご登場いただき、自社の強みや、サンカクを通じて出会いたい人物像についてお話いただく。

株式会社データグリット:創造型AIを実現するGANの技術でAIアプリケーションを開発

代表取締役の岡田侑貴氏

2017年に設立された京都大学発の株式会社データグリットでは、GAN(敵対的生成ネットワーク)というAI技術の研究開発や、大手企業と連携する形でGANを用いたAIアプリケーションの開発・実用化を行っている。GANの技術について、代表取締役の岡田侑貴氏は次のように説明する。
「近年は、多種多様なAIアプリが開発されています。これらのアプリの中核になっているのが、大量の学習データを読み込ませるディープラーニングという技術です。当社が取り組むGANと呼ばれる技術はディープラーニングの新たな応用であり、データそのものを生成します。この技術により、これまでAIが苦手としていたクリエイティブな分野への応用が期待されています。」

GANの技術によって自動生成された架空のアイドル画像。
自動生成ながら、高画像・高品質なクリエイティブの生成ができている

自社にない目線を得て他企業とのアライアンスをよりよい形で実現したい

同社では、すでに各業界のデータホルダー企業と連携し、さまざまなAIアプリの共同開発を進めている。しかし、「他企業との協働」は、まさに同社が現在の課題と感じているところでもある。「GANの技術を用いた事業を展開する企業は国内で少ないこともあり、さまざまな企業様からお声がけをいただいています。その中で、実際にどんな形で連携していくかが悩みどころです。ほとんどの社員は研究者であり社内にアライアンスのノウハウがないため、オープンイノベーションのあり方については手探りで進めている状況です」 


そのため、岡田氏が今回の企画に期待するのは、簡単に言えば「大手企業の目線」だという。「大手企業勤務の方から率直な意見をもらいながら、アライアンス戦略をブラッシュアップしていければと期待しています」

株式会社チトセロボティクス:ロボット運動制御アルゴリズム「ALGoZa」で、労働力不足の解決を目指す

代表取締役社長の西田亮介氏

ロボット導入が困難な分野でロボットシステムの開発に成功

2017年に設立された立命館大学発の株式会社チトセロボティクスは、ロボット運動制御アルゴリズム「ALGoZa」を活用したロボット技術によって、労働力不足や生産性の低さという社会課題の解決を目指している。代表取締役社長の西田亮介氏は、自社で開発した技術「ALGoZa」を用いるメリットについて次のように語る。
「これまでのロボット製品は、エンジニアの手によるキャリブレーション(緻密なプログラミング)が必要であったため、現場ごとに異なる作業需要に対応できませんでした。しかし、『ALGoZa』というテクノロジーを使うことによって、超高精度な制御を簡単に実現できるのです」この技術を駆使して同社では、レストランや病院のバックヤードで食器を仕分け・洗浄するロボットや、工場において柔らかい素材を高精度で組み立てるロボットシステムなど、ロボット導入が難しいといわれた分野でのロボットシステムの開発に成功している。

厨房で可動するロボットアームのイメージ。
「ALGoZa」によって近い将来この様なシーンが当たり前になることが期待される

幅広いロボットの自動化ニーズに効率よく対応するには外部のパワーが不可欠に

同社では今後、工場や飲食厨房、物流を超えたさまざまな分野で、現場ごとのニーズに応じた「ロボットによる自動化」を行い、導入件数をさらに増やしていきたいという。「導入拡大にあたっては外部のパワーが欠かせない」と西田氏は訴える。
「『ロボットによって現場を自動化したい』というニーズは実に幅広いですが、一つひとつ異なる案件にきめ細かく対応していくとなると、社内の人材だけでは難しい状況です。社会課題の解決と価値の創出を一緒に担ってくれる、意欲的な人に出会いたいと願っています」

株式会社Kompath(コンパス):大学発のDeep Techを活用し、医療現場におけるイノベーション創出を目指す

開発中の「Livret」の画面イメージ

東京大学発の株式会社Kompath(コンパス)は、総合商社出身の経営者が率いる、2015年設立の医療系スタートアップだ。現在は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の管轄する「未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業」において、東京大学、東京医科歯科大学と共同で、脳神経外科手術に用いる最先端の医療機器開発に取り組んでいる。
同プロジェクトの研究開発成果の一部は、2019年内に研究用途(非医療機器)のソフトウエア「Livret」として発売開始を予定している。最先端のDeep Learning技術を用いて、CTやMRIといった医用画像から組織を自動で識別し、3次元に可視化する。将来的に医療機器の認証/承認取得を目指しており、医療現場に導入されることで、医療の安全性向上に貢献することが期待される。

代表取締役の高橋遼平氏(Medtech Japan 2019における登壇の様子)

代表取締役の高橋遼平氏は、同社の事業について次のように語る。
「医療の現場は高い安全性が求められる反面、新しい技術の導入が遅れる傾向にあると感じています。また、機器の使いやすさ、見やすさ、デザイン性などに課題を感じている医師の方々も多いです。私たちは“最先端技術の導入とカスタマーエクスペリエンスの洗練により、医療現場にイノベーションを起こす”というミッションのもとに、医師の目線に立った製品を開発しています。」

外部から医療機器業界の知見を吸収し開発に活かしたい

同社の中核を担うのは高い技術力を誇るエンジニアチームだが、医療機器分野の知見が社内に不足していることが課題だと高橋氏は訴える。「医療機器事業は法規制と強く関わっています。制約が多い中で収益性の高いビジネスモデルを構築するには、医療機器業界の知見や法務知識が欠かせません。医療機器のマーケティング・薬事業務に携わった経験をお持ちの方や伝統的な医療機器メーカーさんと接点をもつことで、事業を更に加速していけると考えています。」

大学発ベンチャーの可能性や面白さについて感じていただけただろうか。今回の記事や、3社の案件のページを見て「我こそは」と思った方は、ぜひ各社にサンカクいただき、イノベーションの一翼を担うきっかけとしてほしい。

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