優秀潜在層を獲得!
成長企業が今すぐやるべき『共感型採用』セミナーレポート

現場採用研究所

2019年10月17日(木)に、「サンカク」「Wantedly」「NewsPicks」による3社合同イベントが開催されました。その第二部「優秀層を獲得する”共感型採用”とは?」と題して行われたパネルディスカッションの模様をご紹介します。
優秀層を獲得するために、成長企業が採用した「共感型採用」とは、どのような採用手法なのか?
株式会社メドレー、ラクスル株式会社、ナーブ株式会社の3社をお招きし、各社の目指す人材を手に入れるテクニック、そこに至るまでの経験談、失敗談などをディスカッションしていただきました。
ステージが異なる3つの企業ですが、「優秀な人材を獲得するためには共感が必要であること」は共通していたようです。このディスカッションからは、業界を問わず実践できるヒントが多く、来場者の皆さんはリラックスしつつも集中して耳を傾けていました。

Facilitator:
加藤 恭輔(かとう・きょうすけ)氏(株式会社メドレー 執行役員)

Speaker:
渡邊 建(わたなべ・たつる)氏(ラクスル株式会社 ラクスル事業本部長)
多田 英起(ただ・ひでき)氏(ナーブ株式会社 代表取締役)

優秀な転職潜在層を狙う!攻めの採用戦略セミナー

「共感」を生むための具体的なアクション、各社の取り組み状況

現在は就業中でも将来的に転職を考えている潜在層。どのようなアクションによって、企業は潜在層の優秀な人材とコミュニケーションを図ることができるのでしょうか。加藤氏が、Speaker各社が実践してきた具体的なアクションを聞きました。

渡邊氏:まずは、我々ラクスルという会社を知っていただき、どこに共感してもらいたいかということについて整理しました。会社のビジョンを明確に示すことが最も重要だと考えます。私たちがどのようなビジネスモデルで戦い、何を目指しているのかを共感してもらうために、ターゲットが注目するポイントを押さえ、統一するのです。

さらに、渡邊氏は、リファラルリクルーティング(社員紹介採用)が大きなチャンスだと言います。メッセージを整理しつつ、それを社員などに広めてもらいながら、ラクスル社に興味を持ってくれる人を集めることにフォーカスされているようです。人を集めるために、クラフトビールの試飲会やマグロ解体ショーなどのイベントも企画されているそうです。

加藤氏:ラクスルさんは人を集めてから、どのように共感を誘っているのでしょうか?

渡邊氏:まず、業界にはこだわらず、業界の仕組みを変えて産業を変革し、結果的に「世界を変える」という部分での共感を誘います。私たちのビジョンである「BtoBのプラットフォーマーとして、テクノロジーが浸透していない産業をテクノロジーで効率化させて勝つ」ということを知ってもらいます。

続けて渡邊氏は、ラクスルが戦略的にニッチな産業を選んでいると言います。これは、世界に類のない解答を見つけ出したいというチャレンジ精神によるもので、この選択こそが他の会社と差別化するポイントとなっているそうです。

加藤氏:では、ナーブさんは共感を生むためにどのような工夫をされているのでしょうか。

多田氏:我々は、ライフスタイルに特化したVR事業を行っています。VRの価値を体験していただくために、会社案内をVRにしました。これは非常に効果的だったと言えます。

多田氏は、「『もしも』が見えることによって人々の暮らしは豊かになる」と言います。たとえば、物を購入するときに参考となる「自分自身の過去の経験」。それが少ない不動産、ウエディング、旅行などをVRで経験し参考にすることによって、自分が求めている物やサービスがより見つけやすくなるという自社のサービスが、人材の共感を得ることにも役立っているそうです。

ラクスル株式会社:渡邊建氏

ラクスル株式会社:渡邊建氏

加藤氏:会社案内は、ナーブさんを認知している方々が見るものですが、ナーブさんをまったく認知していない方々に対しては、どんなアクションをとっていますか?

多田氏:その点については、まだ課題があります。広い範囲で共感を生むには、どうしても自社だけでは限界があるため、リーチできない方々に向けてアプローチができるサンカクさんのサービスを活用しています。

ナーブ株式会社:多田英起氏

ナーブ株式会社:多田英起氏

自社の魅力をどのように言語化・差別化しているか

自社のビジョンに共感してもらうには、それを伝わりやすく「言語化」することが大切です。さらに、「共感しやすさ」を生むには、はっきりとした「差別化」が必要です。
加藤氏が、自社の魅力を言語化・差別化するためにSpeaker各社が実践してきた具体的なアクションを聞きました。

渡邊氏:当社は、求める人材を「事業家人材」と定義しています。「勝てる市場」を選定し、テクノロジーを持ち込んで発展させるというビジネスモデルにおいて活躍できるのは、未知の領域にも進んでいく「事業家人材」です。この求める人材の定義を言語化するにあたり、事業家人材とはどんな人物かというペルソナを作り、その周辺的な情報を肉付けしていきました。なぜそのような人材が当社にフィットするか、理解しやすいストーリーを作成していくわけです。

多田氏:当社の場合は、「現在と未来」を明確にすることを重視しています。不動産に絡めてお話をしますと、不動産探しに実店舗を利用するのは月に20人、VRを利用するのは毎月1万人です。この現状を踏まえ、将来VRを利用できる店舗が5,000店舗になれば何が実現できるのかという未来の話をするのです。
ただし、5,000店舗というのはまだまだ現実的ではありません。そこに向けて必要な人材や今後の課題について、ひたすら言語化していく必要があります。当社はこれが十分に行われているからこそ、採用が成功するようになったと考えています。

会場からの質問

・新しい採用チャネルに挑戦するにあたり、KPI(重要業績評価指標)やROI(投資利益率)をどのように設定したか?
・社内稟議をどのようなストーリーで通したか?

加藤氏:つまり、ブランディング投資をするとき、どのように意思決定者を説得するかということですね。結果が出るまで時間がかかる投資については、KPIやROIの設定が難しいものです。これらについてはどう対応されましたか?

渡邊氏:当社は私自身が意思決定者であるため、私自身がどうジャッジするのかということについてお話しします。私は、「効果を確信できる条件」を揃えることに解があると考え、Wantedlyさんにご提供いただいているツールも利用し、判断材料を集めます。最終決定には、自分自身の肌感覚も重要視しますね。また、我々は採用チームでもKPIについて議論しています。ポイントは、「いかに事業部のニーズに合った人材を送り込めるか」です。ROIについては、たった1人でも幹部を採用できれば問題はないと考えています。

多田氏:私は、「変わることより変わらないことのほうが、リスクが高い」という意識を持ち、この意識を共有することが重要だと考えています。また、リターンの大きさを現実的に考えるようにしています。冷静に採用後のリターンを考えれば、優秀な人材は1人につき、たとえ300万円の採用コストがかかったとしても、短期間でのリターンが期待できるでしょう。

加藤氏:高いコストをかけて一本の施策を実行したとしても、大きな効果を得られるとは限りません。重要なのは、そのゴールのために「あらゆる手を打つこと」でしょう。その意識を社員全体で共有することが重要なのではないでしょうか。

人材を獲得する上で、外部パートナーについてはどう考えるべきか

人材の獲得までに必要な業務は多岐に渡ります。それらをすべて自社で行うか、あるいは外部パートナーに委託するかということについては、どう判断しているのでしょうか。まずは加藤氏がメドレー社における取り組みを紹介。その後、Speaker各社より方針や現在の状況などを聞きました。

加藤氏:当社は以前、一切を外部パートナーに頼らない、いわゆる「自前主義」で行っていました。しかし、今年の下期から外注や業務委託など、借りられる力はすべて借りるように大きく方針転換しました。これは、事業方針を変えることに伴っての決断でしたが、戦う市場を変えたために、その市場に沿った施策でもありました。
重要なのは、外部パートナーのクオリティ・コントロールだと考えていますが、ラクスルさんはいかがでしょうか?

株式会社メドレー:加藤恭輔氏

株式会社メドレー:加藤恭輔氏

渡邊氏:当社も以前はすべて自前で行うことをポリシーとしていましたが、現在は業務内容を吟味した上で、外部パートナーに委託することにしています。優秀な人材を獲得することの価値を考えれば、コストを意識する必要はないと判断したのです。
事業家人材の定義などは自分たちで行いますが、ブランディング、イメージ戦略、ライティング(採用コンテンツの制作)などは、NewsPicksさんにお願いしています。ただし、依頼する業務内容を一度は自分たちで経験しているからこそ、このようなアウトソースの成功に繋がるのだと思います。

加藤氏:それはその通りですね。業務を実際に経験せずに外注すると、業務がブラックボックス化し、成果を正しく評価できないからです。まずは、自分たちが業務を行って理解してから、業務委託の方に引き渡すことが重要だと思いますが、ナーブさんはいかがでしょうか?

多田氏:当社は早い段階でパートナー戦略を実施していたのですが、コントロールが不完全になるという問題が発生してしまいました。こちらの意思が十分に伝わっていないため、パートナーを効果的に導くことができず、多大な外注費に見合う結果が出ない。流れ作業でタスクをこなし、納期を追うだけ。大幅な立て直しが必要になりました。しかし、現在はこの状況が改善しています。

多田氏は、結果を考えればプロフェッショナルなパートナーに頼るのは、とても有効的だと言います。しかし、同時にパートナーへの委託タイミングの重要性を自社の経験から力説していました。

多田氏:パートナーに委託するタイミングを見極めなければなりません。小さなプロジェクトで成功してから大きなプロジェクトに転用するなど、慎重さが必要だと感じています。
とはいえ、タイミングが遅すぎると社内で「職人」ができあがり、技能の共有が難しくなります。

優秀な転職潜在層を狙う!攻めの採用戦略セミナー

加藤氏:同感です。大切なのは、採用担当者の私自身がクオリティ・コントロールにコミットすることだと考えています。パートナーに「丸投げしない」ということですね。また、パートナーは、業務においてはプロであっても、会社の理解については外部であるだけに補正が必要です。そこで信頼関係ができあがれば、パートナーのコンサルが機能し、社員と変わらない質を求めることも可能になるはずです。


今回のパネルディスカッションは、30分程度でしたが、質問も飛び交い、中身の濃いものになりました。
今回のパネルディスカッションを通して、次の課題を明確化することによって、採用における共感が生まれる可能性が高まることが分かりました。

・自社のどのような点に共感してもらうのか
・それを言語化するにはどうするのか
・言語化したものをどのように差別化して効果的に伝えるのか

そして、これらの課題に取り組む以前に、自社のビジョンを明確にしておく必要があります。ぜひ、これを機会に「共感型採用」を実現させるための自社のビジョンについても、見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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