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成功するスタートアップの条件、それは創業期を支える仲間の存在。ラクスル代表取締役 松本 恭攝

Posted by サンカクラボ

最注目スタートアップ、ラクスルの創業期に迫る。

空前のスタートアップブームが訪れ、週に1度は資金調達のニュースがWeb系メディアをにぎわせる時代になった。今回紹介するラクスルも、今年2月に大型の資金調達を実施し、世間を賑わせた一社だ。

調達額は、総額14.5億円。ラクスルが投資家からどれほど期待されているか、この金額を見れば一目瞭然だろう。

旧来的な印刷業界にITの力でイノベーションを起こそうとしているラクスルは、今や最注目のスタートアップの1つとも言えるが、そのはじまりは資本金200万円の1人企業だった。

ラクスルはいかにしてここまで成長してきたのか。その軌跡を辿っていきたいと思う。

コストが高く、非効率的だった印刷市場に見出した光

− 松本さんがラクスルを立ち上げた経緯を教えてください。

松本:2008年4月からA.T.Kearneyで約1年半、コンサルタントとして働いて、2009年9月にラクスルを設立しました。現在は起業して6年目になります。

私がコンサルタントを始めた2008年は、ちょうどリーマンショックが起きた年で、大企業がコスト削減に注力し始めていたんです。

そのため、特に販売管理費の削減に関するコンサルティングを担当することが多かったのですが、販売管理費の中でも印刷費は特に高いコストでした。調べてみると、印刷が最もコスト削減率が大きく、その事実に気づいた時、「これは面白いかもしれない」と感じ、印刷業界をより効率化するために何かできないかと考えるようになりました。

− 印刷に目をつけてから、実際に起業に至ったきっかけはあるのですか?

松本: まず、印刷市場の大きさや業界構造のいびつさといった “ファクト”を自分なりに集めていきました。その中で、自分自身が世の中に対してインパクトを与えて、社会を変えることをしたいという思いが強くなったことが大きいです。起業しようと決めて、気がついたら会社を辞めてネットで、「会社設立」と検索して、上位3つの検索結果を見比べながら会社を作っていました(笑)。創業してまず、約2ヶ月かけて印刷会社の方々にお会いし、業界構造に関するヒアリングを行ないながらビジネスモデルを構築していきました。

共同創業者、CTO、人事マネージャー・・・みんな二足のわらじでラクスルにジョインしてくれた。

− ちなみに、創業時の仲間はどのような流れで集めたのですか?

松本:サンカクのコンセプトに似ているのですが、企業に在籍しながらスタートアップの手伝いをしてくれたのが、共同創業者でもある利根川、CTOの山下、人事マネージャーの河合です。みんな、今では会社の中核メンバーですし、あとは、独立系ベンチャーファンドのANRIの佐俣アンリくんもそうです。

元々、佐俣くんとは知り合いで。ちょうど、nanapiのけんすうさん(古川健介)も会社を立ち上げたばかりで、佐俣くんから最初のオフィスを一緒に紹介してもらったりしました。

佐俣くんには色々な人も紹介してもらったのですが、そこで利根川とも出会いました。彼は当時、大手デベロッパーで働いていたのですが、僕のヴィジョンに共感してくれてラクスルを二足のわらじを履きながら手伝ってくれるようになったんです。掛け持ちでおよそ約1年半、同じ家に一緒に住んでやっていた時期もあります(笑)。

CTOの山下は利根川の大学時代の部活の後輩だったことが縁で知り合いました。山下は大手ソーシャルゲーム会社でエンジニアとして働きながら、約3年間平日の夜や週末だけラクスルを手伝ってくれていました。

資本金は200万円。 “二足のわらじ”を履く仲間なしでは、今のラクスルはない。

- 本当に皆さん、二足のわらじで手伝っていたんですね・・・

松本:会社が創業した2009年当時は、リーマンショックの影響もあり、スタートアップに追い風が吹いている今とは状況が大きく異なっていました。ベンチャーキャピタルなんて都市伝説のような存在でしたし、ラクスルの資本金は200万円。とてもじゃないけれど、誰かに給与を支払う余裕すらもない。正直、助かりましたね。

経営は、ヒト・事業・カネという3つの要素があって初めて成り立つものです。ラクスルのサービスはすぐにお金を生み出せるモノではなかったので、そういう中で仲間たちの二足のわらじでの参画は、本当にありがたかったです。

- どうして、余暇の時間を削ってまでラクスルを手伝ってくれたのでしょうか?松本さんが上手く口説いたというのは抜きにして(笑)

松本:そうですね(笑)。もちろん、みんなヴィジョンに共感してくれたから、というのもあると思いますが・・・大企業に3年ほど在籍をすると、業界や職種にもよると思いますが、仕事の流れも大枠分かってきて、自社のことが1年目よりは理解できるようになってきます。

そうなると、社外に目が向いたり、人によっては転職を意識し始めるのかもしれません。

ただ一方でいきなり転職活動も含めて、ベンチャーに飛び込んだりすることはきっと勇気がいることだと思います。

そんな中で、組織のサイズにとらわれず、自分自身の出来ることの確認や、外の人と「ビジネスを通じて一緒にコミュニケーションをとる」ことに興味を持って、ラクスルに関わってくれたのかなと思いますね。

とは言え、会社がある程度組織化し、黒字化して大きくなっていくフェーズでは、二足のわらじでは難しくなってくると感じています。そういう意味では、会社の成長が進むにつれて二足のわらじという働き方に対する感じ方は自分の中で変わってきましたね。

実際、ラクスルはスタートアップと言われていますが、ここ数年はステージが変わってきていると思っています。最終的に利根川も山下も、二足のわらじをやめてラクスルにジョインしてくれていますし。

「どこで働きたいか」ではなく、「何がしたいか」で仕事は選ぶもの。

− では最後に。パラレルキャリアといった言葉も最近はよく聞かれるようになってきていますが、松本さんは二足のわらじを履くことのメリットは、どんなことだとお考えですか?

松本:ベンチャーやスタートアップに行きたいけれど踏み切れない、そんな人には、良い方法だと思います。大企業にいる方の場合は、ベンチャーなどのスピード感に憧れて、隣の芝生が青く見えてしまうと思います。

ただ、その芝生が本当に青いかどうかは、ジョインしなければ判明しないというケースもあります。ですから、成長企業のスピードを自らの肌で確かめにいく際に二足のわらじを履くという手段はすごく良いですよね。

- たしかに、ベンチャーのスピード感は魅力的だけれども、いざ籍を置くとなると躊躇する方は多いと思います。

松本:大企業の中で働いていると、社内をいかに動かすかという政治力や根回し力に意識がいきがちだと思いますが、ベンチャーの場合は事業をつくることにピュアにコミットできます。

会社の外に出てしまえば、その会社独自で通用する能力ではなく、汎用的な能力、つまり純粋な仕事のスキルが求められます。ですから、これは学生と社会人の双方に言えることなのですが、結局「どの会社の名前を名乗りたいか」ではなく、「自分は何がしたいのか、何に打ち込めるか」という視点で、会社は選んだ方がいい。

その方が、選んだ会社が大企業であれベンチャーであれ、会社に入った後に活躍できる可能性は大きく高まりますし、結果的に自分の人生を豊かな方に導いていけるのではないでしょうか。

− お忙しい中、貴重なお時間をいただき、本日はありがとうございました!

(終わり)